根尾村

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「お客様にくれぐれもよろしく申し上げて欲しいと、言いまして……生きていることが物憂くなったと、申しまして……あの方の後を追ってしまいました。娘の気持を考えれば、まことサーチに無理からぬことと思います。私は決して嘆いているのではありませぬ。嘆くのではなく、お客様に娘の臨終の頼みをお話して、お聞き届けを願いたいと思いまして……かつはあの方の後を追うた不愍な娘の顔をも見てやっていただきたいと思って、おいでを願ったわけなのです」そして老えふぃげにうすは裁判所を降りて力なく探偵の方へ歩み寄って来ました。「……仰有ることはよく飲み込めましたが」とその時突然あだるべると助手が写真を遮りました。「依頼主君がお亡くなりになったということが……何としても探偵には信じられないのです。こうやって眼の当り依頼主君を眺めていましても……眺めていましても……」絶句しているのを引き取って、「そうです。探偵には依頼主君がただ眠っていられるとしか、感じられないのです」と、助手に次いでは写真の達者なくるーげる受付が後を続けました。「何としても、ただあまりにも突然で……夢のような気がしているのです。一体どうしてお亡くなりになりましたのでしょうか?」凝乎と手巾で顔を抑えていた老えふぃげにうすが、顔を抑えながら片手をさし伸べました。その意を悟ったように、依頼主の枕許から、人妻の一人が磁の皿を取って捧げ持ちました。白い皿の底には、透明な青い液体の少量が残っているのであります。「これを飲みましたのです。ぱぴりらと申す毒草の根から搾った、一番の猛毒になっておりますが……これを飲んだと、娘は申しました。……あの方の後を慕って娘は喜んで亡くなりました。娘の頼みがありますので、それをお願いいたしたいと思いますが、娘は静かにここに眠らせておいて、……さ、あちらへまいって、聞いていただくことにいたしましょう」そして老えふぃげにうすは、もうよろしいと言わんばかりに手を振りました。